洋服や美容の世界に、ずっと壁を感じていました。


それはきっと、わたしが、洋服や美容を「消費」の典型例だと思い込んでいたから。「お金をつぎ込んで、流行の波に乗らなければいけない。」とか、「欲に惑わされず暮らすためには、洋服や美容の楽しみを諦めなければいけない。」とか。


でも最近、それは、わたしがそれらの世界をよく知らないだけだということに気がつきました。そして、洋服や美容を、「消費」のイメージゆえに楽しめないのは悲しいなあ、と思い、自ら研究してみることにしました。


①いいものに出会い、それらは「どう・なぜいいのか」を知る

②洋服や美容が「消費」と結びついてきた歴史を知る

③消費に組み込まれる前の社会では、女性は服や美容をどう楽しんでいたかを知る


という三つの方法を通して、心地よい楽しみ方を見つけていこうと思っています。


今回はその②の一つとして、「ビューティビジネス ー『美』のイメージが市場をつくる」という本を読みました。気になるポイントはいくつもあったのですが、そのうち、考えを深めていきたいなと思ったことを5つまとめています。疑問に思った点も含めているので、みなさんの意見も聞かせてもらえたら嬉しいです!


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①「美容」と、「衛生」や「健康」は、切っても切り離せない。

美容の世界の価値観は、さまざまな形で変化・発展してきました。そして、その中で大きな役割を担ってきたのが、「衛生」や「健康」に関する知識。


たとえば、シャンプーのいいにおいがすることや、歯が白いこと、腹筋が割れていること‥。「美しくあること」は、ときに「衛生的であること」や「健康的であること」と同義に捉えられることがあります。それは、「美しい」という言葉自体に明確な答えがないからなのかもしれません。


今回のコロナの一件で、「衛生」に関して人々が敏感になっているこの状況を、わたしはこの点で興味深くみています。現時点での対処方法としては、殺菌・消毒が必須な一方で、「それって本質的なのか?もっと自然に寄り添った場所で、菌と共存する方がいいのではないか?」というような、一見「汚い」ようなことを求める意見もあります。今後、社会はどのような方向に向かっていくのでしょう?そして、この一件で、また「美」についての価値観も変化するのでしょうか?


(『身体をめぐる商品史』より)



②「サロン(美容室)」と製品の関係性

昔サロンは、美容製品の流通にとって、重要な窓口になっていたそうです。今でも、美容室にしか置いていないような製品があると思います。それが時を経て、美容製品が、デパートやドラッグストアにも置かれるようになってきました。製品がどこに置かれるかで、ブランドのイメージは変わってきます。


そしてそれに伴って、サロンの役割もまた、変化してきました。

(「サロン」の意味も幅広いですが、ここでは「美容室」と同じようなものと思ってください。)


洗髪がまだ頻繁ではなく、カットの技術も発達していなかった時代、ほとんどの人は髪を伸ばしていて、肌のお手入れやメイクをすることがサロンに行く大きな目的の一つでもありました。日本でも髪を切る習慣はなく、今のような美容師さんの代わりに、「髪結い」という仕事が存在したそうです。


それが、美容製品が簡単に手に入るようになり、家で、つまり、自分の手でケアすることができるようになります。そうすると、「美しくいることは本人の責任」という考えがじわじわと根付いてきます。それが、個人個人が美容製品を手に入れようとする流れができていった一つの理由でもあります。


今では、メイクアップアーティストのかたや、美容師さんがInstagramやYoutubeでいろんな技術を紹介してくれています。


そんな今の時代、「サロンに行くこと」の価値ってどこにあるのでしょうか?

そしてこれから、どういう風に変化していくのでしょうか?



③自分自身や他人に対する「まなざし」の変化

わたしたちにはほとんど想像がつきませんが、昔と今では、わたしたちが自分自身や他人を見る感覚は全く違ったのだと思います。鏡や明るい電気すらない時代、人々はどのようなまなざしを持っていたのでしょうか?自分の姿も人の顔もよく見えないときの美意識と、今の時代の美意識は、どう違ったのでしょう?


このまなざしは、道具の発明や発達とともに変化してきました。

よく見える鏡が出てきたり、電気を簡単に利用できるようになったり。そして特にカメラが登場してからは、そのまなざしに革命が起こったのだと思います。(このあたりのことが気になって、今「Ways of Seeing」という本を読んでいます。)今では自撮り機能がつき、カメラを通して自分の姿まで見えるようになりました。


次にこの「まなざし」に革命が起きるとしたら、それは、どんなことによって起き、どんな変化が起こるのでしょうか?



④「自然派」への動き

この本によると、ビューティ産業が大きくなり始めたあと、初めて自然派の化粧品ブランドを立ち上げたのはパリのブランドで、それはなんと1950年だったそうです。(ヨーロッパって、なんで自然を守ることに対する感度がこんなにも高いんでしょう、、?)


現在、日本でもようやく、「ナチュラル」や「オーガニック」という言葉が定着してきたような気がします。


先日、親世代の知り合いが、わたしと同世代の子にコスメをプレゼントしたいということで、おすすめを聞かれました。そのときにふと、今の世代の子たちは、いわゆるハイブランドというよりは、ナチュラルさを求める傾向が強いなということに気がつきました。


こうやって、安全であったり、自然素材であったりすることが、消費者に手に取ってもらうために不可欠になってきた今、人々は何を基準にものを選ぶようになるのでしょうか?


(ちなみにわたしは、その製品を作っている人の思いに、より注目がいくのではないかと思っています。ブランドを立ち上げた背景がすてきだったりすると、思わず買いたくなってしまいます。)



⑤選び方が難しい。

美容製品と言っても、たくさんの種類があります。


大きく分けると、化粧水・乳液や、ファンデーションなどの整えるためのものと、アイシャドウやチーク、アイライナーなど、足すためのもの。


色や香りであれば、試しにつけてみればすぐに、自分の好みに合うかどうかがわかります。一方、スキンケアの製品や、シャンプーなど、そしてファンデーションなど肌に直接つけるものは、自分の体に合うかどうかも大事になります。でも、そういった製品は、その場で試すのが難しかったり、すぐに結果が出ないので、自分に合うかどうかが分かりづらいことがあります。売る側からしても、宣伝の仕方が悩ましく、結果としてそのブランドの世界観に頼って、消費者の感情に訴えかけるしかなかったりするようです。


いくら成分が良くても、プロがいいと言っていても、自分の体に合わなければ使えない。でも、だからと言って、たくさん買って実験を繰り返すのもあまり現実的ではない、というのが、美容製品の難しいところだなと思います。



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この本の中に、「二度の大きな戦争や、大恐慌でさえ、美容産業の発展を止められなかった」という記述がありましたが、やっぱり、「美しくありたい」という思いはとても強いのだということを、改めて感じました。心地よい美容は、この思いを押し殺すことではなく、自分の価値観に沿う形でその欲を満たすことなのだと思います。



最後に一つ、わたしがいいなと思った言葉を引用して終わりたいと思います。

The Body Shopの創設者、Anita Roddickさんの言葉です。The Body Shopは1976年に自然派の会社としてスタートしました。Anitaさんは、「女性を誘惑するためにパッケージにお金を投資する」ということが当たり前だった当時の美容産業のありかたに疑問を抱き、パッケージを安くしてコストを下げること、そして、旅行先で出会ったタヒチの伝統的な美容の習慣にヒントを得て、自然素材を使うことを決めました。


"It was a revelation to realize that there were women all over the world caring for their bodies perfectly well without ever buying a single cosmetic."


「世界中には、一つの化粧品も買うことなく、自分自身の体を丁寧にケアしている女性たちがいることに気づいたのです。」


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産業の歴史を知ることで、わたしの中で「美容」を「消費」のイメージと結びつけてしまっていた理由のいくつかに気が付いて、「心地よい美容」を求めるいいヒントになりました。


この旅は、まだまだ続きます…。


みなさんの感想や意見も、ぜひ聞かせてください◎