Little Life Labメンバーにインタビューをしていく「LLL member interview」。3人目は、1期生の野首沙也加さん。普段は会社員として働く沙也加さんですが、プライベートでは長年Instagramの一日一投稿を続けており、その分野問わない多様な投稿内容に、更新を心待ちにするフォロワーもいるほど。今回はそんな沙也加さんに、日々考えていることや感じていることを話してもらいました。


鎌田安里紗(以下、鎌田):沙也加さん、よろしくお願いします。Instagramの一日一投稿、ずっと続けていますよね。本当にすごいなと思っていて。毎回投稿の内容が面白いし、カバー範囲もすごく広いですし。始めたきっかけを教えていただけますか。

野首沙也加(以下、野首):始めたのは2016年の3月なんですが、その1年ぐらい前の友達との会話がきっかけです。その友達も週5で働いているのですが、その子がふと「今週も月曜日が来た。じーっと我慢して土日。じーっと我慢して土日。その繰り返しだよね」と言っていて。そういう感覚は否定できないと思う気持ちもある反面、なんか嫌だなと感じて…。


鎌田:たしかにちょっと寂しいですね。

野首:月曜日から金曜日までを過ぎるのを待ちながら過ごすんじゃなくて、大袈裟ですけど、自分なりに一日一日の意味を作りたいなと思って、一日一つ「◯◯したい」みたいな感じで投稿してみようかなと思ったのがきっかけです。

鎌田:そんなきっかけだったんですね。2016年3月からだから、3年も経ってますね。すごい!3年間欠かすことなく、毎日投稿してるんですね。

野首:毎日更新するのが半分意地でもあります(笑)そこはぶれたくないなと思っているので。

さやかさんのInstagram


■心地よさを追及し、出合った「フェアトレード」

鎌田:投稿する内容にルールみたいなものはあるんですか?

野首:やっぱりInstagramという場所なので、最初の頃は、いわゆる「良い感じ」な写真が撮れるように内容を考えていました。でも毎日やっていくうちに、そういう取り繕ったものだけだと限界が生じてきたんです。それが本当に自分の求めてることだったり、好きなことだったらいいんですけど。最近はもう、本当に自分の好きなこととか、心地いいなと思うことを通して、「今日はこんな日」っていう自分なりの意味を作りたいと思って毎日投稿しています

鎌田:何かを学びにいくとか、新しいものを試してみるとか、買ってみたとか。いろんなことをやってるんだけど、一貫した沙也加さんの興味みたいなものがあるのを感じています。私が見始めたのがここ半年ぐらいで、テイストが変わってからの投稿だからかもしれないんですけど。始めた頃の写真映えするっていうのはどういう感じだったんですか?

野首:1年目は毎月テーマカラーを決めて、その色に沿うものを選んで写真を撮っていました。例えば、黄色がテーマの月だったら、黄色い服を着たり、化粧品も黄色のパッケージのものを選んだり。写真の見た目を意識していました。

鎌田:それも素敵ですね。最近だと、環境にやさしいものとか、フェアトレードやアニマルウェルフェアなどに関することも書いてますよね。これは沙也加さんの興味がそういう方向に移ってきたということですか?

野首:毎日更新しながら、自分が心地いいと思うものを探っていく中で、フェアトレードという言葉に出合いました。それでだんだん、自然環境のことにも寄っていったという感じです。

鎌田:自分の暮らしの中で心地よさを辿っていくと、フェアトレードに巡り合ったというのは面白いことですね。フェアトレードに関心を持つきっかけって、国際協力や社会課題が入口になることが多いように思います。勉強のテーマとしてはフェアトレードを知っていても、暮らしの中に取り入れたり、自分の生活に結びつけることって、一歩進んだアクションのような感じがしていて。沙也加さんは逆にそっちから入って、自分の暮らしと結びつけているんですね。

野首:私はもともと服が好きだったんですけど、服の買い方について自分の中で違和感を感じるようになっていました。安い服を買って飽きたら捨てる、そしてまた買って、飽きたら捨てる。この繰り返ししかしてないような気がして。物としてはもちろん、もっと自分の中の実感としても自分に残るものを知りたいなと思うようになっていました。そんなことを夜通し考えたり調べたりしているうちに、People Treeに出会って、フェアトレードという言葉にも出会いました。
鎌田:それは何年ぐらい前ですか?

野首:本格的に自分の中でフェアトレードの仕組みと服が結びついて、買おうと決めたのは2年ぐらい前です。

鎌田:では、「服のたね」(※)を見つけてくれたのもその後ですかね。何がきっかけだったんですか?
※EVERY DENIMが主宰するオンラインコミュニティ「えぶりシティ」の中で、鎌田がオーナーを務める綿を種から育てて服にするプロジェクト

野首:People Treeから始まり、きっと一度、安里紗さんに辿り着いてる。服ができる流れを勉強できたら素敵だなと思って参加しました。

鎌田:沙也加さんは去年と今年、2年連続参加してくれて、去年は紡績工場にも来てくれましたね。そうした体験も経て、実際に完成したシャツが届いてみて、どうでしたか?

野首:まずは何より、一着の重みを感じました。それに、紡績工場に行けたのはいい経験です。なかなか行けない場所なので。



■一日一投稿を通じ、変化したこと

鎌田:日々の投稿のテーマはどうやって決めているんですか?

野首:毎月この日は花屋に行こうとか、ケーキを食べようとか、カフェに行こうとか、おおまかな計画は立てています。日々いろいろあるので、その通りにはならないんですけど。

鎌田:計画に忠実にやるというよりも、なんとなく決めといて、あとはその日の気分でやるという感じなんですね。素敵だな。3年以上続けてきて、変わったことはありますか?

野首:一番の変化はやっぱり、「納得感」ですね。納得感を持って、買い物したり、選択ができるようになったのは自分の生活の中で一番変わったことかなと思います

鎌田:それめっちゃ大事ですよね。沙也加さんなりの選択の基準は、言葉にできるようなものですか?それとも感覚的なものですか?

野首:けっこう感覚的です。安里紗さんもnoteに書いてらっしゃった「わかりやすさを求めない」こと。もやもやするなとか、これって本当に正しいのかなとか、これって別の見方したら違うんじゃないかなとか、そういうことを日々考えた上で、今の自分にとってはこれかなと思うことを選べるようになりました。


鎌田:本当にそうですよね。これさえあればOKっていう基準があるわけじゃなくて、ずーっと考えながら、今の自分が思う最善の選択はこれだ、という感じで、毎回その選択が更新されていく感じですよね。


■フェアトレードとは「お礼」を伝える手段
鎌田:今一番興味があることや、やってみたいことはありますか?

野首:物を大事にすることは、誰かの仕事を大事にすることだと思っていて。フェアトレードもそういう意味で興味をもったのかなと思うんですけど。生産過程とか背景とか、その裏にある問題とか、そういうことをもっと勉強していけたらいいなと思っています。

鎌田:「物を大事にすることは、誰かの仕事を大事にすること」って、すっごくいい言葉ですね。

野首:だからこそ、去年、服のたねの企画で紡績工場に行って、お仕事の話をしてくださった工場の方の姿勢を拝見できたことは良かったなと思っています。

鎌田:本当にそうですよね。物だけ見ると、その後ろでいろんな人の仕事があるっていうことがなかなか見えないけど、辿っていくと絶対に人がいて、その人が何を大事にしているかとか、どういう姿勢で働いているのかとかを聞いて、その上で物を使えるのは嬉しいことですよね。


野首:そうですね。見るって大きいなって思います。
それと、Instagramをやっていて一番良かったなって思うことは、届けるべき人にきちんと感謝が伝えられることだと思っています。例えば、服や本を買ったお店のことをInstagramに載せると、それに気付いてくれた著者の方や服を作られた方が、「ありがとうございます」と、コメントをくださることがあります。それに対して、「こちらこそありがとうございます」と返せる。もちろん、直接言えれば一番良いんですけど、なかなかそれが難しい中で、Instagramを通してだと、お仕事に対してお礼がちゃんと言える。
フェアトレードも、同じように、素敵な服を作ってくれた方に「ありがとうございます」とお礼を言える手段の一つだなと思います。もちろん言葉だけじゃなくて、きちんと代金も支払われるべきだと思うんですけど。

鎌田:いいですね。SNSは、広く浅くみたいなところばかりフォーカスされがちだけど、実はそうやって直接やりとりができたり、メッセージを届けたい人にピンポイントで届けられたりするから、本当にいいツールですよね。


■完璧を手放してできることを見つける楽しみ
鎌田:沙也加さんは自分の生活のことや、物を買うこと、そこから何かを発信することなんかについて、自分なりに楽しく探求されているのが素敵ですよね。

野首:そうですね。何か一つ知ると、知らない世界がまだまだあることに気付くから、これがどんどん広がっていくその果てしなさが面白いです。


鎌田:うんうん。私も生産背景への興味は、正さなきゃという正義感よりも、自分の生活の中から来る単純な好奇心の方が強いんですよね。例えば、今使っているペンとかコップってどんな人が作ったんだろう?みたいな。それで、そこを追っていくと必然的に、今沙也加さんが仰ってたような、知らない世界があることが分かってくるじゃないですか。それを知ってしまったら、できれば悪くない方を選びたいから、それでどんどん自分の選択に納得感が募っていくみたいな感じはありますよね。興味って本当に尽きないですよね。でもその方が日々の生活も面白いですよね。

野首:悩んじゃうけど、悩むことをやめちゃだめ。何でもそうだと思います。

鎌田:環境とか社会のこととか考えてると、その果てしなさに絶望する場合もあるじゃないですか。「あー、やっても変わんないな」とか、「こんな問題もあったのか…」とか。考えることが多すぎると、なかったことにしたくなる欲も出てくると思うんです。だけど沙也加さんは、そうはならず、日々楽しく情報を集めて、自分で選んでいってる。深刻にならないコツみたいなのってありますか?

野首:例えば、プラスチックごみで言うと、出さない方が良いに決まってるけど、完全に出さないのは難しくて。じゃあ、プラスチックごみを絶対に出さないのは諦めて、完全にはできないことも受け入れて、その上で、プラスチックごみを出しちゃう自分ができることは何なのかを考える。最近はそれが楽しいです。でもそれはきっと、人それぞれ楽しいと思うポイントが違うので、自分で探っていくしかないんですけど。答えになってないかも。

鎌田:いや、なってます。ポジティブな諦めが大事っていうことですね。いいこと聞きました。まず一回、完璧にするのはやめようってポジティブに諦めて、自分が心地いいと感じる範囲でできることを考えるのは、誰でもできるはずですもんね。

野首:私、『女子エコ日記 366days おしゃれとエコって、両立するの?』(講談社)っていう本が大好きなんです。変に押し付けがましくなくて、本音の部分が書いてあって。こんな感じでいいんだと思えるようになりました。


鎌田:この本、すっごく良いですよね。普通は、「環境に配慮しよう」という方向性の本の著者が「でもこれはやりたくない」とか「めんどくさい」みたいなことを言うのって自己矛盾になっちゃうじゃないですか。だけど、この本はそこを乗り越えて、自己矛盾を全部さらけだしてくれてるのが気持ちいいですよね。読みながら、本当そうだよねって思う。

野首:この本は、私のきっかけになったかなと思います。

鎌田:私も読み直そう。今日は沙也加さんの考えてることがいろいろ聞けて良かったです。ありがとうございました!

野首沙也加(のくびさやか)

Instagram: sayaka3706



Photo: Daiki Endo

Text: Yui Machida