キタムラマサヒロさんとの出会いは2年前。
鎌田のとある撮影の際に、ヘアメイクとしてやってきたのがキタムラさんでした。
ヘアメイクアーティストとして活動しているキタムラさんは、
独特の世界観でアクセサリーづくりを続けています。
そんなキタムラさんを訪ねて、東京都墨田区のアトリエ兼自宅兼ショップに足を運びました。


■ヘアメイクからアクセサリーづくりへ
鎌田安里紗(以下、鎌田):いつも「まーくん」と呼んでいるので、今日も「まーくん」でいきますね。まーくん、今日はよろしくお願いします。

キタムラマサヒロ(以下:キタムラ):こちらこそよろしくお願いします。

鎌田:早速ですが、まーくんの仕事内容を改めて教えてください。

キタムラ:はい。今はアクセサリーづくりとお店の運営をメインで行なっています。平日はアクセサリー製作をして、金・土・日の週末にお店を開けている感じです。昔はヘアメイクの仕事の方が多かったのですが、今はもっぱらアクセサリーが中心ですね。



鎌田:まーくんに初めて会ったのは、えるちゃん(赤澤えるさん)と一緒に撮影してもらったときですよね。えるちゃんからのご紹介でヘアメイクとして来てくれて、そのとき、撮影用に、と持ってきてくれた指輪がとても素敵で、その場で買わせてもらったの。2年くらい前ですかね?


キタムラ:もっと前じゃないかな?3,4年くらい前な気がする。

鎌田:そんなに…!時の流れは早いですね…(後ほど調べると2017年、2年前でした。笑)まーくんがアクセサリーづくりをはじめたのはその頃ですか?

キタムラ:つくりはじめたのは4,5年ほど前からです。もともと美容師で、アートっぽいヘアメイクの作品をつくるのが好きなのもあって、フリーランスとして独立するタイミングで、ヘアメイクだけじゃなくてアクセサリーもつくりはじめました。

鎌田:アクセサリーをつくりたい、という明確な動機は何かあったんですか?



キタムラ:名古屋のアクセサリーショップの店長さんと出会うきっかけがあって。その頃はまだ美容師で、自分がつくりたいヘアメイクの作品を休みの日につくって、撮り溜めていました。そんなときにその店長さんと出会って、アクセサリーショップのギャラリー部分で面白いことをできる人を探していたみたいで、「じゃあ、その作品を展示しようよ」となりました。結局そのときすぐには実現しなかったのですが、1年後にもう一度名古屋まで行ってお店を見させてもらったときに、改めてそのお店のアクセサリーを手に取ると、単純にワクワクしたんですよね。すごくクオリティが高くて、「これをつけて外に出たい」「これをつけて人に会いたい」という気持ちが沸き上がってきたんです。で、その気持ちって、自分が美容師を目指したときの思いと同じだな、って思ったんです。

鎌田:と、言いますと?

キタムラ:ヘアスタイルを変えたときって、やっぱり気持ちが上がりますよね。人に会いたくなったり、気分が晴れたり。そういう瞬間をつくりたくて美容師になったところがあって。アクセサリーも、もしかしたらそれと同じことを起こせるんじゃないか?と、「美容師」や「ヘアメイク」と「アクセサリー」が自分のなかでつながった気がしたんです。

鎌田:私、最近髪をバッサリ切りましたけど、かなり気分が変わりましたね。それとアクセサリーが近い感覚というのも、すごく分かります。

キタムラ:さらに心惹かれたのは、そのお店のスタッフさんがみんな、愛情深くアクセサリーに接していたということ。作家さんより詳しいんじゃないの?というくらい、ひとつひとつに対して丁寧にストーリーや魅力を語ってくれるんです。こんなお店だったら、自分がアクセサリーをつくっても、安心して置けるなと感じました。この時点ではまだ一つもアクセサリーをつくっていないのですが(笑)。

鎌田:やや先走っていますね。(笑)



キタムラ:もともとものづくりは好きで、でもその「つくる対象」としてアクセサリーは入ってなかったんですよね。というのも、自分自身、ファッションのなかで、アクセサリーは相対的に優先順位が低かったから。そういうものを自分がつくるのってどうなんだろう?と思っていました。でもそのお店のアクセサリーやスタッフさんたちと改めて出会って、自分もつくってみたい、という気持ちになったんです。そこから、アクセサリーづくりをはじめました。まだ何もつくったことのなかった僕の作品を展示してくれたその店長さんには、感謝しかありません。

鎌田:どんなアクセサリーからつくりはじめたのですか?

キタムラ:はじめは、ヘアアクセサリーがメインでしたね。フリーランスとして独立したてで、ヘアアレンジを教えるワークショップなどをやっていたのですが、そのときに「こんなアクセサリーはどう?」と提案するかたちで、アクセサリーづくりを並行していきました。「このヘアアクセサリーをつけたいから、ヘアアレンジ頑張ってみよう」と思ってもらいたくて。



鎌田:さっきも少しお聞きしましたが、まーくんが「美容師」を目指したり、「ヘアメイク」や「アクセサリー」にこだわるのは、なぜなのでしょう?飾ることで「気持ちが上がる」ということだとは思うのですが。

キタムラ:そうですね…たぶん、根本的には自分に自信がないからだと思います。自信がないからこそ、同じく自信がない人を見ると、「自信を持って!」と後押ししたくなってしまう。「自信がある人」が、好きなんです。そしてまた、ヘアメイクやアクセサリー、あらゆるファッションなどで身を飾ることは、僕は「隠す」ことではなく「本質」だと思っています。自分が好きなものや、こうありたいと思うもので「飾る」という行為は、その人のセンスがあらわれるという意味で「本質」を表に出していることなのかな、と。だからこそ、「自分が好きなものや、こうありたいと思うもの」と出会って、それを身につけることができれば、自分らしさを表に出して、自信につながるんじゃないかと思っています。ヘアメイクも、アクセサリーも、それがきっかけで楽しい気持ちになったとき、その表情の変化が好きなんです。小さな変化でも、気持ちが上がること、楽しくなること。そんな瞬間を、押しつけではなく、あくまで自然につくっていきたいなと思っています。


■アクセサリーのアイデアは「日々感じること」のなかに
鎌田:ヘアアクセサリーからはじめて、そのあとピアスや指輪を少しずつつくりはじめたのですか?

キタムラ:そうですね。ヘアアクセサリーの展示などをしていて、自分用につくったリングなどを見て、お客さんから「こういうリングは売ってないんですか?」などと言っていただくことが増えて。そういう需要があるなら、やってみようかな、と思ったのがきっかけです。髪をかきあげるときの女性らしい動作とか、ついつい髪を触りたくなるとか、そういう仕草を美しく見せるような耳周りのアクセサリーや指輪があってもいいのかな、と。


鎌田:言われてみれば、どのアクセサリーも髪を触る動作につながりますね。

キタムラ:当時は、ヘアメイクを教えるために、自分の髪もかなり長く伸ばしていました。一度自分の髪で試して「このヘアアクセサリーは使いにくいかも」とか検証したりしていましたね。一度ばっさり髪を切ったら、ヘアアクセサリーを全くつくれなくなってしまって…

鎌田:ええ!そうなんですね。

キタムラ:根本的には自分が欲しいものをつくってるんだ、とそのとき改めて思いましたね。今も、ピアスやリングも自分で試してみながらつくっています。大ぶりで、女性しかつけられないようなものは、まちで歩いている人がそれをつけていることを想像したりしています。

鎌田:まーくんのアクセサリーは、毎回コンセプトがあってそれに基づいてつくっていますよね。私が買ったこの指輪のときは「なびく」というコンセプトでした。

キタムラ:髪が「なびく」というところからインスピレーションを得て、そのコンセプトにしました。そのときどきの生活のなかで感じることや、まわりの人間関係から影響を受けて、「このことを大切にしたいけど、意識が薄れちゃってるな」とか「こうしたらもっとよくなるんじゃないかな」ということがコンセプトになることが多いですね。

鎌田:このリングをしていると、例えば打ち合わせ中、相手の方の目線がかなりの頻度でこの指輪を追っています(笑)。それくらい存在感のある指輪でとっても気に入っています。あとは会話のきっかけにもなりますね。「これ「なびくリング」って言うんです」「たしかに、なびいてますね」と。そして前回が「添う」というコンセプトでした。



キタムラ:自分の活動全体を通して、「寄り添うこと」を大切にしたいという思いが根底にあります。人と人が寄り添っていけたら、平和に楽しく暮らせるのにな、と思ったりして。アクセサリーとしては「指に添うかたち」「耳に添うかたち」、そういうものを表現して、それをつけている人が、生活の中のふとした瞬間に「添う」こと、人と寄り添うことについて思い出してもらえたら、と思っています。

鎌田:なんだかお守りみたいですね。そして今回は「重なり」というコンセプトです。

キタムラ:実は前回の「添う」というテーマが、取り組んでみて改めて非常に壮大だな、と。添うことは、片方が「添う」だけでは「寄りかかる」ことになってしまい、それは片方だけの「エゴ」なんじゃないか。お互いの気持が重なり合わないと、寄り添うことにはならないんじゃないかと思い至ったんです。つまり「添う」を考えるためには「重なり」を考えないといけないんじゃないか、ということです。寄り添うこととはなんだろう…今もずっと考え続けているしまだ答えは出ていませんが、「相手の気持ちをどこまで考えられるか」「その人の人生にどこまで関われるか」ということなのかなと思っていて。それは一つの行為や単純な気持ちではきっとできなくて、いろいろなことの積み重ねの結果として寄り添うことになるんじゃないかと思っています。そういったこともあって「重なり」をコンセプトにしました。アクセサリーのデザイン的には、金属同士が重なったデザインや、樹脂と金属などの異素材の重なりなどで、表現しています。

鎌田:コンセプトについては、お客さんには明確に伝えるのですか?


キタムラ:必ずしも伝えるとは限らないですね。決して押し付けたいわけではないんです。そのコンセプトを知った上でも、知らないままでも、いいかなと思っています。


■「自分がやる意味」を見出だせるか
鎌田:このお花のアクセサリー、とっても素敵だと思ったら、ハーブが入っているんですね。

キタムラ:そうなんです。このお店を出したのが2018年の5月なのですが、そのタイミングでハーブティーをつくっている方と出会って。話をするなかで、ハーブティーには使えないような小さなハーブがもったいなくて…ということを聞きました。それを聞いて、自分のアクセサリーづくりに活かせるんじゃないかなと思って、結果これができあがりました。正直、お花をモチーフにしたアクセサリーにはある一定の需要があり、好きな人も多いんですが、これまでは自分がやる意味を見出だせずにいました。でも、一部欠けていたり、かたちが少し崩れていたりするだけで活かせないものがあって、そこに自分が関わることで魅力を増すことができるなら、自分がやる意味があるかな、と思ったんです。



鎌田:小さすぎるとハーブティーに使えない、ということもあるんですね。

キタムラ:通常、ハーブティーは見た目より成分を重視する人が多いらしいのですが、その方は五感を大切にされていて。味や成分はもちろん、見た目の美しさも追求されています。着色していないのに、この美しさなんです。僕も五感をとても大切にしているので、その点でも相性がいいなと思いました。ハーブティーになれなかった小さなお花をつかって、ブレンドをイメージしてアクセサリーをつくっています。そうしたら向こうの方も、僕のアクセサリーをイメージしてブレンドしたハーブティーをつくってくれたりと、嬉しいコラボレーションが起きています。

鎌田:それはすごく素敵です。先ほど「自分がやる意味が…」とおっしゃっていましたが、まーくんはあらゆる場面で「自分がやる意味があるのか」を考えているのですか?

キタムラ:よく考えますね。時と場合によって、「自分がやる意味」が明確に感じられるときもあれば、その「意味」自体をつくっていくこともあります。ただ、それらを考えた結果「自分がやる意味は特に無いな」と思ったら、それは仕事にせずに趣味の範囲に留めますね。何かを表現するなら、自分が取り組む意味を感じられた方がいいなと思っています。




日々の暮らしに寄り添うアクセサリーづくりを続けるキタムラさん。
その根底にあるのは、「飾ることで気持ちが変わる、その瞬間をつくりたい」という純粋な思いでした。
後編では、お店づくりの先にある夢や、キタムラさんの等身大の葛藤についてもお聞きします。



Text/Photo kaoaoaori