「上質な睡眠のための正装」を提案するGOOD NIGHT SUIT(グッドナイトスーツ)。

「生地」と「サイジング」をとことん追求し、ワンランク上の睡眠を目指すパジャマブランドです。
GOOD NIGHT SUIT のパジャマに初めて袖を通してから、このパジャマをつくっているご夫婦のことがずっと気になっていた鎌田。
今回、GOOD NIGHT SUIT代表の神鳥(かんどり)さんから、パジャマにかける想いをお聞きしました。


■ 生地フリーク、パジャマと出会う

鎌田安里紗(以下、鎌田):今回、Little Life Lab(以下、LLL)を立ち上げるにあたって、「ちいさなことこそ大切に」というコンセプトを掲げました。
仕事や生活をしていると、ふと何かに興味を持つことや、疑問に出会うことがある。けれど、ちょっとしたことだからとそのまま流してしまったり、いつのまにか忘れてしまったりする。それがすごくもったいないことだと思うんです。
そのちいさなことをキャッチして眺めたり深めたりしてみると、当たり前だと思っていたことが違って見えてきたり、自分なりの世界観が生まれてきたりする。だけど日々忙しく過ごす中で、1人でそれと向き合うことって結構ハードルが高いなと。それで、興味の対象や関心事がある人たちで集まって、みんなで一緒にやってみる、そういう場をつくれたらいいなと。

そんなLLLに集まる人たちと一緒に、素敵な暮らし方や働き方、うつくしいものづくりをしている方に会って話を聞いて、記事として公開してみることにしました。なぜなら、そういった方々は「自分なりの小さな興味や疑問を育てて表現している人」だと思うからです。これから色々な人に会っていきたいと考えているのですが、その記念すべき第一回目として、GOOD NIGHT SUITの神鳥さんにお願いできればと思いました。

私自身はふとしたきっかけでGOOD NIGHT SUITを知り、パジャマを着るようになったのですが、本当に着心地が良くて驚いたんです。睡眠のスイッチが入る、というか。このパジャマをつくっている人は一体誰で、どんな想いでつくっているんだろう?と気になって仕方がなくて、突然連絡してお会いさせていただいことが前回、神鳥さんとの最初の出会いでした。今日お会いするのは2回目ですね。
早速ですが、GOOD NIGHT SUITの着想はどんなところにあったのでしょうか?


神鳥智有さん(以下、神鳥):もともと学生の頃からファッションが大好きで、大学生の頃はアパレルでバイトをしていました。その頃から、生地が大好きで。この生地とあの生地で、なんでこんなに違うんだろう?と、すごく興味を持っていたんです。将来はファッションや生地に関わる仕事に就きたいなと思っていました。
ファッションとは別軸で海外にも興味があって、1年間ロンドンに留学したりもしていました。その留学中に、衝撃的なものに出会ってしまったんです。それが、パジャマでした。



鎌田:海外でパジャマと出会ったんですね。


神鳥:はい。そのパジャマはロンドンのシャツブランドがつくっているパジャマなんですが、良質な生地と縫製でつくられていて、本当にかっこよかったんです。パジャマがかっこいいなんて、当時の僕には衝撃的すぎて。帰国後もずっとパジャマのことが忘れられずにいました。ただ、ファッションや生地への興味も強くあったので、大学卒業後にファッション全般を学ぶ専門学校に1年間通い、そこを卒業してから生地専門の商社に就職しました。日本の生地産地を巡り、そこで集めてきた良質な生地を海外のメゾンブランドに提案する、という仕事を6年間していました。

鎌田:ファッションも生地も海外も、すべて関われるなんて、夢のような仕事ですね。



神鳥:そうなんです。すごく充実していました。ただ、海外へ行ってメゾンブランドに生地をプレゼンすることよりも、日本の生地産地を巡って、100年前の見本帳を手が真っ黒になりながら、ゲホゲホしながら生地を漁るほうが好きだったんですよね。そうやって生地屋さんと一緒に「こんな生地をつくったらいいんじゃないか」などと相談して、つくってもらった唯一無二の生地をメゾンに提案して採用される、というような仕事をしていたんです。日本全国の生地産地とのつながりができましたし、実際に自分の提案が採用されるという実績が重なっていくことで、「絶対にいい生地を集められる」という自信が積み上げられていきました。



■ とりあえず言ってみる、やってみる

鎌田:聞いているだけでも充実した仕事の様子が浮かびます。そんななかで、GOOD NIGHT SUITへの転機はどのようにしてやってきたのでしょうか?

神鳥:仕事は順調だったのですが、忙しくてどうしても帰りが遅くなり、睡眠時間が短くなってしまって……短いからこそ眠りの質を上げたいと思ったときに、ふと、ロンドンで出会ったパジャマのことを思い出したんです。パジャマがあれば、生活を律することができるかも、と。それで百貨店とか、色々なところにパジャマを探しに行ったのですが、欲しいと思えるもの見つからなくて。それなら自分でつくってしまおう、と思ったんです。仕事のつながりで生地屋さんや縫製工場さんにお願いすることもできたので、生地にとことんこだわったパジャマをつくりました。それで、今の奥さんと当時はまだ付き合っていた頃で「こういうパジャマで、ペアのものがあったらいいよね」となり、ブランドを立ち上げることにしました。

鎌田:気に入るものがないからをつくってしまう、というのがすごいですね。



神鳥:昔から、思い立ったらなんでもやってみるタイプなんです。あと、やりたいと思ったことは、とりあえず口に出して言ってみるようにしています。周りに恵まれていて、誰かが声を拾って助けてくれるんですよね。


鎌田:それはすごく分かります。ちょっとでも気になること、やってみたいことがあると、私も周りにすぐ言います。すると誰かしら助けてくれる人が現れて、ありがたくお世話になっています(笑)

神鳥:言うのが大事ですよね。パジャマについても、つくってみたはいいものの、それをネットでどう売ればいいのかとか、モデルさんはどこで探せばいいのかとか、何も分からない。だから「どうやってネットで売るのか」「モデルはどうすればいいのだ」と言ってみると、それについてちょっと知っている人が教えてくれたり、助けてくれたりするんです。それで今のように、分からないなりにかたちになってきています。

鎌田:WEBサイトを見ると、「日本製の生地」や「日本の熟練の職人さんによる縫製」など、「日本」ということにこだわっていらっしゃるように見えます。

神鳥:はい。「日本製の生地」で、「日本の熟練の職人さんによる縫製」ということにこだわりがありますね。というのも、前職時代、日本の生地産地をめぐるなかで、廃業するたくさんの生地屋さんを見てきました。あの生地はもう二度とつくられることがないんだ……と残念な気持ちになることも多くて。

正直、生地づくりに関しては、日本の織機(生地を織るための機械)が中国に輸出されたこともあり、技術は中国に抜かれつつあります。でも、生地の加工に関しては、日本は絶対に負けないんです。実際、海外のメゾンブランドでも、日本の生地の加工技術の高さには定評がありました。日本が世界に誇れる生地加工の技術を、未来に向けて残していきたい。会社員のときから、いつか自分のブランドで独立したときには、微力でも、産業的に少しでも成り立つようにお手伝いをしたいという思いがありました。




■ 眠りの"正装"をデザインする

鎌田:ブランドを立ち上げてから3年半ということですが、これまでに苦労されたのはどんなことですか?

神鳥:縫製工場探しには苦労しました。納得できる価格とクオリティでやってくれるところが少なくて。

鎌田:高すぎる、ということですか?

神鳥:いえ、むしろその逆かもしれません。パジャマを中心に縫製する工場では、1着あたり1,000円ほどかけて縫製するようなところが一般的で、その分効率重視で、クオリティを高く維持できないんです。ちなみに今GOOD NIGHT SUITの1着あたりの縫製は、その5倍ほどで、それだけクオリティを重視しています。



鎌田:なるほど……日本における、パジャマに対するイメージが影響していそうですね。パジャマって、私もGOOD NIGHT SUITと出会うまではそうでしたが、いいものを着るという意識を持ちにくいですよね。わざわざパジャマを買う人がそもそも少ない気がします。私服のTシャツがヨレてきて、1軍から降格されてパジャマになる……みたいな位置づけの人が多そう。


神鳥:僕もそうでした(笑) だから、ブランドを始めるとき、一着15,000円と言ったら周りの友だちみんなに反対されました。「そんな高いパジャマじゃ売れないよ!」と。でも、自分でつくって、それを着て眠ったときに、鎌田さんが言ったように「眠りのスイッチが入った」んです。「この生地のよさを分かってくれる人は絶対にいるはずだし、眠るのにこれ以上にいい制服はないな」と直感しました。

鎌田:眠りの制服……それがGOOD NIGHT SUITの名前の由来でもあるのですね。上質な睡眠のための正装、本当に的確なネーミングだと思います。
子どもの頃はパジャマを着ていたのに、だんだん自分で選ぶようになってからおざなりになってきて、最近また「パジャマ」に戻ってきましたが、本当いいですよね、パジャマ(しみじみ)。



神鳥:お客様から「最高にイカした”THE パジャマ”です」と言われたことがあって、とても嬉しかったですね。最近は以前に比べると、睡眠にお金をかける向きもあるので、業界全体として、注目していただける機会は増えるのかなと思っています。



■ なんとなく買う、からの脱却

鎌田:一般的に、アウターとかバッグとか靴とか、どうしても目に見えるものにお金をかけがちですよね。それ自体は悪いことではないのですが、それだけでなく、パジャマやインナーなど、「なんとなく」買ってしまいがちなものでも自分なりのこだわりを持って選ぶと、生活全体がおもしろくなっていくと感じます。
私はよく「エシカル」という言葉を通して、買い物のあり方を考えることについての発信をしていますが、この言葉は、社会貢献や環境保全といったテーマと結びつけられることが多いです。ものを作る時や買う時、その背景での影響をしっかり意識することを促す言葉なので、必然的に社会や自然環境、そして人や動物との関係性に目を向けることになります。ですが、あちらを立てればこちらが立たず、といった感じで何事も一長一短なので、100%どんな善にも反さない、みたいな選択はなかなかできません。
結局は、「考えをめぐらせて、自分の価値観に照らして、できる限り社会に対してプラスの働きをすることに関われる選択をする」ことが重要なのだと思います。歯切れの悪い説明ですが、そのプロセスを経た納得感や腹落ち感が、自分自身に蓄積されていきます。
その選択までの過程で「自分の頭で思考した」という事実が、自分自身の心にもよい作用を及ぼすはずだと思っています。今はなんでも「なんとなく」手に入る時代だけど、だからこそ立ち止まって考えること、自分の意思で選ぶことが大切なんじゃないかな、と。



神鳥:僕自身も、昔はデザインさえよければそれでよい、という時期がありました。でもこうしてパジャマをつくる側になってみて、いまは、「どういう段階を踏んでつくられているんだろう」「どういう縫製でつくられているんだろう」と一つ一つ考えるようになりました。「で、結局のところ、この価格は妥当なのか?」と考えます。それで買えなくなることも多いですが。

それと「普段見えない部分にこだわると生活の質が高まる」というのは、僕自身も実感していてとても共感します。僕、最近シルクのパンツを履いているのですが、いつも手洗いしながら「あー、なんでパンツをこんなに丁寧に洗ってるんだろ」って思いつつ、そんな時間が楽しみだったりするんですよね。



鎌田:シルクのパンツ!(笑) 普通に考えたら洗濯に手間がかかるのは嫌だけど、それがあることによって、ある種、強制的にというか、ふと立ち止まって考えたり、見直したりするきっかけになりますよね。今日もGOOD NIGHT SUITのパジャマを干してきましたけど、パジャマが干してある風景を見るのが楽しみなんですよね。



■ そのとき一緒にいる人と、やりたいことをやってみる

鎌田:GOOD NIGHT SUITにはキッズラインもありますよね。

神鳥:はい。80サイズと100サイズの2サイズ展開です。もともと、映画『ホームアローン』で主人公の男の子のパジャマ姿が可愛くて、いつかつくりたいな~とは思っていたんですが、息子が生まれたのをきっかけに、「やるなら今じゃない?」となりました。

鎌田:ブランド立ち上げのきっかけも、奥様と「ペアがほしいよね」とお話しされたことがきっかけでしたよね。その時々の人生で出会う人がきっかけとなって、いろいろなことが動いているのでしょうか。

神鳥:そうですね。パジャマブランドという事業もそうですし、働き方もそれに影響されていると思います。子どもが生まれて、妻も前職を辞めて会社に合流したので、どうせなら家で子どもの面倒も見ながら働こう、と、今の事務所兼自宅に引っ越してきました。保育園に預けず、子どもと一緒に生活しながら、そのなかに仕事も入り込んでいる、というような感じです。でも、そろそろ在庫スペースが限界なので、近くに出ないといけないなとは思っています。


鎌田:少しずつ着実に事業が大きくなってきているんですね。今後の展開はどんなことを考えていますか?

神鳥:僕自身パジャマをつくりながら、こんなパジャマもあんなパジャマも欲しい、といろいろ欲が出てきていて。今は、外に着ていくこともできるデザインのパジャマを開発中です。今着ているのはそれのサンプルなんですけど。



鎌田:え~!これパジャマなんですね、全然気が付かなかったです。でも言われてみればパジャマ要素がありますね。


神鳥:あとは「眠り」についてもっと追求していきたいとも思っていて、より眠りの質を高めることのできるパジャマについても模索中です。ヒアルロン酸を織り込んだ生地をつくってみたりしたのですが、なかなか……

鎌田:生地にヒアルロン酸を織り込むことができるなんて……生地づくりの奥深さを垣間見ました……

神鳥:あと、いつかは路面店を持ちたいなとも思っています。やっぱり対面で、生地のよさを直接お伝えできるので。そのときはソフトクリームも一緒に売りたいな。

鎌田:ソフトクリームですか?なぜ?

神鳥:僕ソフトクリームが大好きなんですよ。ソフトクリーム屋さんで、パジャマも売りたい。(笑)

鎌田:神鳥さんが言うと、いつか本当に実現しそうな気がしてきますね!




どこまでも自分の興味に素直で、周りに助けてもらうことを厭わない神鳥さん。好きなものを極めていった結果、誰にも真似できない領域を独自につくり上げ、周囲の共感を呼んでいます。そんな神鳥さんを一言で表すなら「生地への愛にあふれる人」でしょうか。何かに対する強烈な愛と探究心、それを形にしてしまう機動力があれば、物事は前に進んでいくのかもしれません。




 

神鳥 智有(かんどり ともなり)
株式会社GOOD NIGHT SUIT 代表取締役
岐阜県出身。大学で国際経営を学んだ後、専門学校に通いファッションビジネスを多面的に学ぶ。生地の専門商社に入社、日本の生地産地をめぐり、海外のメゾンブランドに日本の生地を売る営業職に就く。2015年、パジャマの生産から販売までを行うGOOD NIGHT SUITを立ち上げる。

 

GOOD NIGHT SUIT

https://www.good-night-suit.com/




Text/Photo kaoaoaori