アクセサリーづくりをはじめることになったきっかけや、そこにかける思いなどをお聞きしてきた前編。後編では、お店づくりの先にある夢や、等身大の葛藤についてお聞きしていきます。


■お店づくりのこだわりと、そこから見えてきたもの
鎌田:このお店では、まーくんのつくるアクセサリー以外にも、いろんな作家さんのものがセレクトで置かれているんですね。

キタムラ:そうですね。このお店自体は決してアクセスしやすい場所ではないので、せっかく来てくれたからにはいろんなものを知ってもらいたい、伝える場所でありたい、という思いがあります。自分がアクセサリー製作をはじめたばかりの頃も、名古屋のお店をはじめとして、いろいろなスペースや機会をいただいてきたので、今度は自分も、誰かのきっかけになる場所をつくれたらいいな、と思っています。

鎌田:お店はギャラリーやイベントスペースにもなっているんですよね。お店の名前「hitotsumusubi」にはどんな意味が込められているのでしょう?


キタムラ:ひとつ結び…ヘアメイクから来ていますね。ひとつに結ぶことは、ヘアアレンジの基本です。このお店が、そんな「ベース」でありながら、いろんなものと「結ばれる」ことにつながっていけばいいな、という願いを込めています。「ひとつのものから、いろんなものに結ばれていく」、そんな場所にしていきたいと思っています。

鎌田:お店を持つ計画は、アクセサリーをつくりはじめた頃からあったのですか?

キタムラ:いずれお店を持ちたい、という気持ちはあったにはあったのですが、全然リアルには考えられていませんでしたね。それよりも「アトリエ兼自宅を持ちたい」という気持ちの方が強くて、周囲の人にずっと言っていました。

鎌田:お店についてはそこまで気持ちは強くなかったんですね。

キタムラ:そうなんです。この場所を以前に使われていた方が洋服のデザイナーさんで、とても仲良くさせていただいている方なのですが、その方がお引っ越しされるタイミングで、僕に声をかけてくださって。そのとき住んでいたところには7年ほど居て、とても居心地が良くてなかなか離れられずにいたのですが、だからこそ引っ越そう、あえて環境を変えよう、と思いました。そして、どうせなら挑戦してみよう、と「アトリエ兼自宅」ではなく「アトリエ兼自宅兼ショップ」とすることにしたんです。

鎌田:突然決まった、という感じなのでしょうか。

キタムラ:そうですね。オープンしたのが5月で、お店を出すことに決めたのはその約3,4ヶ月前…というのも、僕、誕生日が5月で。どうせお店を出すなら若ければ若いほどいいだろう、と、無理やり誕生日が来る前にオープンさせました。

鎌田:ぎりぎり何歳で?

キタムラ:27歳ですね、ぎりぎり(笑)。オープンにともなって別の方にライブなどもお願いしたりして、絶対に逃げられない状況を自分でつくって、周りの方の協力も得ながらなんとかオープンに漕ぎ着けました。

鎌田:お店をオープンして1年ちょっと経ったんですね。何か変化はありましたか?

キタムラ:いろいろありますが、さらに上のことを考えられるようになりましたね。

鎌田:おお。次なる目標が?

キタムラ:ちょっと…無謀なことすぎてお話しするのが恥ずかしいのですが…

鎌田:ぜひ教えて下さい!聞きたい!(前のめり)

キタムラ:話してもいいですか?(笑)

鎌田:ぜひぜひ!

キタムラ:本当に無謀なことなのですが、実家が埼玉の田舎の方で、土地だけはたくさんあって…その土地を有効活用して……

鎌田:(じっと待つ)

キタムラ:…村、みたいなものをつくれたらいいな、と思っています。

鎌田:村、ですか?

キタムラ:はい。アトリエとお店をつくるなら、今すでに実現できているので、さらに上のことをやりたくて。アクセサリーやファッション系のお店があったり、ヘアメイクのスタジオがあったり、その横に畑が、そしてカフェやレストランがあって…

鎌田:できそう!その様子が目に浮かびます。

キタムラ:本当ですか?嬉しいです。

鎌田:作家さんやアーティストさんが集まって、つくったり、売ったりしている。

キタムラ:そうそう。さらに欲を言えば、数人限定でもいいから泊まれるような場所があったりとか。

鎌田:素敵です。アーティスト・イン・レジデンスみたいな感じですね。

キタムラ:いまのお店をはじめたり、いろんな場所のいろんなお店に足を運ぶ中で感じたのは「場所やアクセスを言い訳にはできない」ということで。いいものをつくれば、人は集まってくる。だからこそ、あえて埼玉の田舎に、そういう村をつくりたいんです。ただ、その村のなかだけで完結してしまうと世界が狭くなるので、外に開かれたまちになったらいいな、とは思っています。


■根底にあるのは「つくることが好き」ということ
鎌田:まーくん、食にも関心が高いですよね?私がインスタで玄米の定食とかをアップすると絶対反応してくれる(笑)。食に対するアンテナを張っているな、と感じるんです。

キタムラ:そうですね。僕、こう見えてめちゃくちゃ食べる量が多いんですよ。

鎌田:そうなんですか?かなり食が細そうですが。

キタムラ:みんなにそう言われます(笑)。かつ魚介アレルギーで、食べられるものも限られていて。そうなってくると、食べるものをきちんと選んで、いいものを摂らないと、すぐ不調になってしまうんです。極端に言うと、少ない選択肢の中から選んで、それを集中して大量に採ることになるので、間違ったものを選ぶと大変で。

鎌田:それで食に対する関心というか、意識が高くなったんですね。実際に意識するようになったのはいつ頃からですか?

キタムラ:一人暮らしを始めた頃からですかね。何かをつくるということが昔から好きで、料理についても「自分でつくりたい」という思いが強くなって。「料理って、なんだろう?」と考えたんです。それで、レシピなどを見てつくることや、「これを入れて混ぜれば美味しくできます」というものを使うことは、料理じゃないのでは…と思うようになりました。「添加物が入ってれば、そりゃ美味しくなるよね。邪道だわ」と。

鎌田:だいぶストイックです(笑)。

キタムラ:ですかね(笑)。アクセサリーも、たとえば工場に型をつくってもらうやり方というのもあるのですが、今の時点では、自分の手元でどこまでできるか挑戦中ですね。

鎌田:自分でやってみる、試してみる、という精神はどこからくるのでしょうか?

キタムラ:どうなんでしょう…父や兄は建築系の仕事をしていて、その影響もあって、細かい作業や、ものをつくることには興味がありましたし好きでした。ただ、小学校のときは工作の宿題が嫌いで、父につくってもらっていました。

鎌田:その時点では、ものづくりに目覚めていなかったのですかね。

キタムラ:そうかもしれません。小学校の高学年になる頃から、ものづくりへの興味が湧いてきた感じがありました。でも、そのときはまだ自分が思い描く理想と、できることの間にギャップがあって。「こういうものをつくりたい」という構想だけは大きくて、複雑で、そこに到達できるスキルがないから未完成のまま…みたいなことが多かったですね。中学生の頃「お面」を掘る授業があったのですが、案の定自分としては未完成の状態で授業が終わってしまって。家に持ち帰って完成させようと思っていたら、学校に展示される用に選ばれてしまい、結局完成できず、なんてこともありました。

鎌田:何かをつくることへの思い入れが、人一倍強いんですね。

キタムラ:そうかもしれません。


■感じたことを、熱量高く届けたい
鎌田:まーくんのアクセサリー製作、展示は、季節ごとに行なっているんですか?

キタムラ:最近はそうですね。春、夏と、秋冬はまとめたりまとめなかったり。年に3~4回の頻度でやっています。春には春のアクセサリーを、夏には夏のアクセサリーをつくっています。通常、ファッション業界のサイクルでいくと、春夏頃に秋冬(AW)のラインを、秋冬に次の春夏(SS)のラインを発表しますよね。それを否定するつもりはありませんが、僕は、自分が感じる季節の流れに添ってやっていくのが、自分には合っていると思っています。

鎌田:すごく健康的ですね。自分がそのときに感じたことを、アクセサリーにしてお客さんに届ける。それが季節にも合っているし、なおかつ自分の手元でつくっているから無駄なものも出てこない。

キタムラ:先ほどコンセプトの話もしましたが、自分の中でも「流れ」みたいなものがあるので、そのときどきに感じたことをリアルに手渡さないと、熱量が変わってしまう気もしていて。そういう意味でも、リアルタイムに表現していきたいです。


鎌田:まーくんのアクセサリーはオンラインでも買えますか?

キタムラ:買えます。でも、その部分についてはまだ迷いもあって。より多くの人、必要としている人に寄り添いたい気持ちがある一方で、実物を見て、納得して買ってもらいたいという気持ちもある。できれば、会って、話をしたいなと思っています。

鎌田:葛藤があるんですね。いろんな地域に出かけていく、みたいなこともできたら面白そうです。

キタムラ:実は、活動をはじめた当初は、各地を旅しながらやっていきたいと思っていました。今はいろいろなことからそれが実現できていないのですが、ヘアメイクのボックスがついた移動式の車で、アクセサリーも持って、全国を回ってヘアメイクとアクセサリーのカウンセリングをしたい…という夢もあります

鎌田:それめちゃくちゃ面白いです!来てくれたら嬉しい。実現できたら、行ってみたいところはありますか?

キタムラ:金沢とか、四国、九州にも行ってみたいですね。

鎌田:四国!ぜひ徳島にもお願いします。


■いかにして普段の生活に寄り添えるか
鎌田:ここまで、いろいろお話をお聞きしましたが、アクセサリーづくりの話を聞いたという感じがしないのが不思議です。アクセサリーをつくるということ、それ自体にももちろんこだわっていらっしゃるのですが、それ以上に、「このアクセサリーを使う人はどうなるか?」ということが中心にあるというか。美容師の頃のお話から、未来の村のお話まで、そこが一貫していますよね。

キタムラ:言われてみればそうですね。アクセサリーに特別こだわらなくてもいいのかもしれない。

鎌田:まーくんには何か表現したいことがあって、その表現手段が、いまはアクセサリー、という感じなのですかね。



キタムラ:そうですね。あとは、単純に自分がアクセサリーをつけることがめちゃくちゃ好き、というのが大きいです。普段の生活に寄り添うことができる、というのもアクセサリーの強みで。自分ができる表現では、今の時点ではアクセサリーだし、今後もずっと続けていきたいと今は思っています。そこに、新しい何かが加わっても面白そうだな、と。お香とか、キャンドルとか、興味がある対象は幅広いかもしれません。

鎌田:やることが尽きないですね。

キタムラ:ひとつできたら、また新しいかたちをつくりたくなる。永遠に落ち着くことはない気がしますね。

鎌田:村をつくるという、大きな夢も見つかりましたしね。


■人と一緒につくることの難しさと向き合う
キタムラ:ただ、村をつくる上で課題だと感じる部分があって。僕、誰かと何かを一緒につくり上げるときに、どうしても一緒にやる人に対して遠慮してしまうところがあるんです。それがいい場合もあるし、悪い場合もある。

鎌田:100%の力を出しきれない、ということでしょうか?

キタムラ:そうです、そうです。例えばヘアメイクで自分の作品をつくって、いざそれを撮影するというとき、カメラマンさんを入れたとしたら、その瞬間からそれは僕の作品ではなくなって、カメラマンさんの良さを全面に出してもらいたい、と本気で思ってしまうんです。カメラマンさんの作品として見えてしまうんですね。だから、今お店には僕のアクセサリーをモデルさんにつけてもらった写真を飾っていますが、これは自分で撮影しています。


鎌田:ええ!撮影までできるんですか。

キタムラ:一応、ですね。カメラマンさんが職業としてやっていることを、自分もできます、って軽々しく言えないです…でもカメラマンさんに撮ってもらうと、それはもう僕の作品ではなくなってしまうので、自分の作品は、自分で撮るようにしているんです。

鎌田:ということは、もしかして料理についても…

キタムラ:料理は好きでこだわりますが、こちらに引っ越してきてからは、周りの人に「料理が好き」とすら言えていません(笑)。

鎌田:なんと!(笑)

キタムラ:以前は「カフェやりたいな~」なんて単純に思うこともあったりしましたが、こちらに来て飲食店の方と知り合ったり、飲食店をやっていなくても料理がめちゃくちゃ上手な人が多かったりして。自分が料理好きなんて、恥ずかしくて言えないです…

鎌田:「料理する?」って聞かれたらなんて答えるんですか?



キタムラ:「まあ、自炊はします…」くらいですかね。

鎌田:めちゃくちゃ控え目(笑)。

キタムラ:みんな料理のクオリティが高いから、自分ができるって言わなくてもいいかな、と思っています。

鎌田:なんだか、独特なバランス感覚ですね。周りを見て遠慮しすぎているわけではないけど、引くところではすっと引く。でも自分の世界はちゃんとある。主張が強すぎず、弱すぎもせず、ですね。

キタムラ:そうですね。それは本当にいい意味でも悪い意味でも。でもこれからはもう少し主張をしていきたいですね。これからもっと大きいことをしていくには、絶対に自分ひとりの力ではできなくて、いろんな人が関わるなかで自分の力を出せるようにならないと、と思っています。お店づくりも、去年までは「自分の作品は端っこの方で、ほそぼそと置いておけばいいや」くらいに思っていたのですが、今は全面に出していきたいと思っていて。僕自身がいいものをつくっている方が、関わりたいと思ってもらえる作家さんも増えるんじゃないかな、と思っています。だからまずは自分がいいものをつくりたい。1日のノルマを自分で設定して、それを達成するのがすごい快感ですね。



鎌田:自己マネジメント能力が高い…

キタムラ:いやいや、甘ったれてる部分も多いですよ。

鎌田:それを全然感じません…

キタムラ:自分のだめなところでいくと、先ほどの話ともつながりますが、いろんな人が関わって一緒に何かをつくると、無意識のうちに、できる人の力に頼ってしまうんですよね。誰かがいると「きっとその人がやってくれるだろう」って、自分の力を発揮できなくなってしまう。そのくせ、人にお願いすること、頼ることができないという。頼っちゃいけないところで頼って、頼るべき部分で頼れない、という厄介な性格なんです。自分の矛盾とどう付き合っていくか、改善していくか、を考えながら、今後はやっていきたいですね。



柔らかい物腰で控えめに語るキタムラさんからは、
人との接し方やものづくりに対して強い芯を感じます。
目の前のことに真摯に取り組み、誠実に考え続けることが、
キタムラさんの作品の繊細さと力強さにそのまま現れているように思えました。



Text/Photo kaoaoaori